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2005.06.10

蜆汁

Dsc04994x昨日、蜆を貰った。
我が家では到底食べ切れなさそうな量だったので、お隣におすそ分けし、夕食に蜆汁を作った。
味噌を入れながら、思い出したことがある。

敗戦前後、日本中が食料品や医薬品に不自由していた時代のこと。
場所は近畿地方のどこか。
その地名を聞いたような気もするのだが、憶えていない。

その頃、父は肝臓を悪くし黄疸になり寝込んでいた。
母はドス黒い顔で死にかけている父のために、その頃住んでいた町の川で蜆捕りをし、毎日、蜆汁を作って父に飲ませた。
時は冬。
川の水は冷たかったが、母、父を助けたい一心で蜆を捕ったと言う。

「私が蜆を捕ってあの人の命を救ってあげたのよ」
蜆汁を作るたびに、誰にともなく、母は誇らしげに語った。
どうも、蜆汁がなかったら、私はこの世にいなかったらしい。

日本中がぎりぎりの生活をしていたその頃、母が懸命に捕った蜆は命を繋ぐ食物だった。
そんな食物が今の世にあるだろうか?

世界中の珍味が食卓に並んでいるというのに、そのありがたみをに思いを馳せることも無く、現代人はテレビを観ながら口に運んでいる。
食物はおなかが空いたときに食べるもので、それが命を支えているのだと言う意識は無い。
がりがりに痩せても、食べることに罪悪感を感じる人には、食物は毒に見えるのだろう。

とはいっても、人生において、人の気持ちは常に移ろい、すれ違う。
妻の必死の努力で命を助けてもらった男は、浮気ばかりしていて家庭を顧みない夫になった。
凍えながら冷たい川に入っていた女は、夫が浮気相手と遊びに行った先で末娘に買ってきた水色のワンピースを切り裂く妻になった。
そして、娘はそんな二人しか見ていなかったので、結婚に絶望した。
二人は老境に差し掛かり、仲の良い夫婦に戻ったが、やがて、妻の病気で再び引き裂かれた。

そんな人生を思い、蜆汁を作りながら、私は不思議な感動を覚えていた。
人はこうやって、感動を受け継いでいく・・・
何気ない日常の中で、思い出が味噌汁を永遠に変える。


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写真はダスティミュラー(シロタエギク・花言葉=あなたを支える)とユーフォルビア(ハツユキソウ・花言葉=良い仲間)
なんだか、とっても相性のよさそうな寄せ植えでしょ?

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