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2005.02.17

白熊星人

昨日からヒマに任せて作った物語。
ロマンチックな雪の話にしたかったのに、どんどん、ずれて軌道修正不能状態に・・・
まあ、そんなトンチンカンな話だと思って読んでくださいね。

彼らが地上に降り立ったのは、世界中を寒波が襲った日で、その日、真夏のはずの南太平洋の島々にもなぜか雪が降った。
それ以降、雪が降るたびに、人々はその日の衝撃を思い出すことになる。(生きている限り)

臨時ニュースが世界中を飛び交い、原稿を読んでいるアナウンサーの顔は蒼白だった。
そのニュースを読んでいる彼自身が信じられないといった顔つきだった。

エイリアンの宇宙船はその数日前から地球の成層圏を周回していた。
彼らは各国の首脳に、それぞれの国の言語で声明を送り、
「我々は移住先を求めている。南極に住まわせてもらえないだろうか」
と要請していた。
その要請を受け、国連は紛糾した。
といっても、そのことは一般ピープルには知らされていなかった。

彼らの説明のよると、彼らは地球時間で百年ほど前に故郷の星を離れ、宇宙を放浪していた。
そのため、陽の光や暑さには弱く、南極のようなところでしか生きられないのだという。
彼らの容姿についてはその時点では秘されていた。

「南極のようなところで生活は出来ないのでは?
いずれ、地球全体に広がって、害を及ぼす存在になるのでは?」
という危惧で、各国は移住を認めなかった。
「いいえ、心配は入りません。
我々は南極で十分生活できます。
南極の氷が融けないようにすることも出来ます。
それに、我々は五個体ですから、そんなに広い場所も要りません」

五個体と聞いて、アメリカが、「ま、いいんじゃないか」と言い出した。
彼らの技術力を手に入れたいとアメリカが舌なめずりをするのが目に見えるようだったとスリランカ代表は後で語った。
アメリカさえその気になれば、右ならえの日本代表が、「愛」だの「友好」だの言い出して、ロシアやイギリス・フランスもおこぼれを期待し、唯一最後まで反対したニュージーランドの反対を押し切って、彼らの移住受け入れ案は可決された。
ただ、彼らの容姿が、あまりにも人類とかけ離れているのはどうかと言う声も出たので、それを見た上でと言う条件が付いた。
そして、その大雪の日、小型飛行艇(といっても、どう見ても、小型の氷山のようにしか見えなかった)でアラスカに降り立ったエイリアンの姿が、各国のテレビで放映された。
その姿は・・・

白熊だった。
ジーンズのような材質で出来たオーバーオールを着て、喉元に赤いリボンをまき、黒い長靴を履いている。
それは、彼らの要請で、地球側が用意した物だった。
リボンはネクタイ代わりで、オーバーオールは下半身を露出するのは失礼だと思ったから、ただ、靴はどうしてもきつくて辛かったと、彼は、後日、ニューズウィークのインタビューに答えた。
2mほどの身長、ふさふさとした白い毛並み、つぶらな瞳、尖った黒い鼻、彼はまさに立ち上がった白熊そのものだった。
熊はその手をマスコミのフラッシュに向かって振りながら、のっしのっしと歩き、その様はテディベアが歩いているようで、世界中の子供のみならずぬいぐるみファンの心を掴んでしまった。
他の人たちも、とりあえず、その姿だけで南極を選んだ理由を納得できてしまった。

熊は生物学的には♂で、年齢は彼らの星の年数で50歳、人間では300歳ほどになるという。
名前はバール。
流暢な英仏露語(ただし、それぞれ田舎訛あり)を話し、日本語も(大阪弁だが)出来た。

それぞれの言語で、国連で挨拶する白熊を見て、全世界は湧いた。

こんなラブリーで優しい生き物を保護せずしてどうするという論調でマスコミが報じ、彼らは南極移住を認められた。

宇宙船(でっかい氷山にしか見えなかった)は南極に着陸し、彼らはそこで生活を始めた。
彼らのライフスタイルを知りたいとマスコミは訪問を打診したが、もうしばらく待って欲しい、今はまだこちらも生活の基盤を作るのに精一杯だからと言う彼らの断りに頷かざるを得なかった。
国連からは査察団が入っているし、とりあえず、人類に不利益なことはしていないと報告も出ていたので仕方なかった。

1年後、彼らは各国のマスコミの代表取材に応じると発表した。

そこで彼らが見たのは、雪原の中で、遊んでいる白熊。

「建物は?」
「ありませんねん」
「建物が無くても大丈夫なんですか?」
「毛皮がありますやんか?」
「そりゃそうだけど・・・食料は?」
「腹減ったら、アザラシとって食べますんや」
「調理方法は?」
「生に決まってまんがな」
「お腹壊したりしませんか?」
「とってすぐに食べるんやから、新鮮でっせ」
「お金とかは?」
「金?必要あらしません」
「何か買うとか、そんなことないんですか?」
「ここにおったら、何もかも、無料(ただ)でんがな。買うもんあらしません」
「それでも、美味しい物を食べたいとか、どこかに行きたいとか・・・」
「アザラシの生肉食うたら、他のもん食べられませんで。
それに、宇宙を百年も放浪しとったもんやから、どこにも行きたいとは思いませんわ」
「でも、宇宙船のメンテナンスとか、たまには飛ばさないと・・・宇宙船、どこにあるんですか?」
「なんや、アメリカの人が欲しいというたんで、もって行ってもらいましたわ」
「いいんですか?」
「ここにずっと住んどるつもりやから、別にいらしません」

彼らは、オーバーオールのような服を着ているので、かろうじて白熊星人(彼らはそう呼ばれていた)と分かるが、それを着ていなければ、そこらにいる白熊と区別が付かない。
バール(代表白熊の名前)は鼻を上げ、くんくんと空気を嗅ぐ。

「ところで、皆さん、もうすぐ、ブリザード来まっせ。
最低、一週間は吹きそうや。
わしら、これから飯食って、寝るつもりやけど、皆さん、どうしますん?」

泊まるところも無いので、報道陣はあわてて、ヘリに乗り込み、その場を離れた。
五頭(人)の白熊が手を振る。
側にいた、本物の白熊たちも立ち上がって、それを見送った。

それから十年。
温暖化に向かっていたはずの地球は、毎年、気温が下がっていった。
大雪の年が続き、ヨーロッパやアラスカ、ロシアには新しい氷河が出来つつあった。

白熊星人のところには、あれからも、何回か、テレビカメラが入ったし、監視員も、彼らの居住地の近くに常駐していたが、彼らは相変わらず、雪原で遊び暮らしいるだけだった。
アメリカは彼らの宇宙船を解体して調査していたが、その推進システムはさっぱり分からなかった。
彼らの宇宙船は棒のようなものが一本あるだけで、燃料になるようなものもないし、それを使う機関も無い。
氷も単なる水が凍ったものでしかなかった。見かけどおり、巨大な氷山だった。
彼らはそれに穴を開けて、何十年の旅をしてきたらしい。
食料も、その氷山の外側に凍らせていた。
それを少しずつ溶かし、食料を取り出して食べ、、百年宇宙を進んできたらしい。
「いやー、ここで断られたら、氷が無うなって、わしら、宇宙の藻屑でしたわ」
宇宙船は後50年ほどしか持たなかったらしい。
「酸素はどうしていたんですか?」
「酸素、ああ、空気ね。氷を溶かして作っていたよ」
「そんな機械ありませんでしたよ」
「機械?そんなもん無うても、氷さえあれば、出来ますがな」
「どうやって?」
「息がしたいと思えばいいだけですわ」
「息がしたいって・・・?
それはともかく、どうやって、こんな物飛ばしてきたんですか?」
NASAの技術者はとうとう音をあげて聞いた。
「どうやってって、そりゃ、あっち行きたいなーと思えばいいんや」
「あの棒が羅針盤ってことですか?」
「あれは、単なる棒や」
「この宇宙船には、何の推進力も無いですよ。それに、言われたとおり、あっちいけと思ったけど行きませんでした」
「変やな?」
白熊は氷山に乗り、棒を持ち、「あっちいけー」と言いながら指し示すと、あらあら、不思議。
氷山はひょいと浮き、行けと棒を向けたほうに動く。
「ほら、動くやん」
唖然としていた技術者は恐る恐る聞いてみた。
「もしかして、この棒は作った物とは違うんですか?」
「うん、途中の星で拾ったもんや。
うちの星、皆凍っとるから、木は珍しゅうて・・・仰山持ってきたんやけど、途中で爪楊枝代わりに使うてしもた。
これで指し示すと、集中できるんよ。重宝するわ」
「じゃあ、ただ、あっちに行けと思うだけで、なんでも動かせるんですか」
「まあな、まあ、あんな大きな氷になると、最低、5人は必要やけど」
「それで、5人ですか・・・」
「そや、言い忘れとったけど、星の友達が遊びにくるんや。攻撃せんどってな」
「友達!?」
「ああ、もうすぐ付くはずや」
「・・・何人くらい来るんですか?」
「50人くらいかな?」
「50人!」
「うん」
「どうやって、通信したんですか?」
「そんなん、今でも話せるでー。心ン中で呼びかければいいだけや」
「サイコキネシスにテレパシー・・・超能力!」
「ああ、地球のお人達の中には、あまり、私らみたいなもんはいまへんな」
「ひゃあ~」

技術者の報告を受けて、大慌てでアメリカは国連に提訴した。
「そんな恐ろしいエイリアンに地球に居てもらっては困る」
そう言う意見で全会一致し、彼らは白熊星人に出て行ってもらいたいと通達した。

白熊星人達の反撃を恐れていたのだが、彼らは文句も言わず、
「そうでっか、仕方ありまへんな。出て行きます。
ただ、氷が無いとわてらも困りますんや。
ちょっと、貰っていってよろしか?」
白熊星人を追い出せればなんでも良いと思った各国首脳は、好きなだけ持って行けと答えた。
遊びに来た50人の白熊星人と5人の白熊星人は、元の星にもどることになった。

「いろいろと迷惑かけたようで申し訳ありまへんでしたなあ」
白熊は最後まで丁寧で、紳士的だった。
「こっちの勝手ですみません」
地球側の立会人も思わずそう言ってしまったくらいだった。
少し、揺れるかもしれないということで、地球側の立会人はニュージーランドでそれを見送ることにした。
各国の観測所も一応そこに避難した。

やがて、彼らは出発した。

巨大な氷の塊が宙に浮くのが見えた途端、ニュージーランドばかりでなく、地球全体が揺れた。
彼らは南極のほとんどの氷を持ち上げてしまったのだ。
なんせ、55人も居たのだから、それくらい朝飯前。

重い氷の重石を外され、南極大陸が跳ね上がり、地球の地軸は乱れ、大洪水と地震、火山の噴火が、瞬時に各大陸を襲った。
その大天災(白熊災?)で地球文明は壊滅した。

「ねえ、おとうさん、ちょっと、重いんとちゃいます?
動きわるいですやん」
「そうやなあ、鯨、積みすぎたかなあ」
「母さんが、鯨、一杯、欲しいといったんだよ」
子供が父親を弁護する。
「あんた、それ、なにやっとんの?」
「うん、テレビゲームたらいうもんやて。地球人にもろた」
「食べれるんかいな?」
「固とうて、固とうて」
「そんなん、ほかっちゃい」
「うん」
子供がそう言うと、そのテレビゲームは手元から消えた。
「それにしても、地球人て良い人たちやったね。国に帰ったら、皆に教えたらなあかんな」
「そやな」
「父ちゃん、今晩はエックの家でアザラシパーティや、はよ、いかな、美味しいとこなくなるでー」
「そや、いそがな」
「ほんと、あんな美味しいもんがある地球っていいとこやったなー」
そんな会話を交わしながら、彼らは他の家族のもとに行くために部屋を出た。
バールの声が通路に響く。
「これだけ、氷があれば、300年くらいは宇宙を旅できるなー」

白熊星人の楽しい宇宙のたびは続く・・・


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